2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

マルクス・ガブリエル氏が描いたベーシックインカムとは:『つながり過ぎた世界の先に』から-2

ガブリエル氏は、当書の中ではベーシックインカムという用語、表現を使っていませんが、この最低限の所得保障は、一般的な意味で、ベーシックインカム、あるいはユニバーサル・ベーシックインカムを想定していることは間違いないでしょう。 その保障される所…

倫理資本主義の理想実現は可能か:マルクス・ガブリエル氏「つながり過ぎた世界の先に」からー1

日本も普通の国になるべきと言います。 ここでの普通とは、軍隊を持つことを示しています。 理由は、近くに2つの、非常に危険な独裁政権が存在している特殊な状況下にあるためです。 こうした普通の適用を用いると、普通でないことも普通に解釈し、適用され…

エマニュエル・トッド氏によるグローバリズム以後とパンデミック以後のグローバル社会と日本

今、新型コロナパンデミックが、行き過ぎた資本主義とそれ自体がもたらす資本主義の終焉と一体のものとして、グローバリズムの限界あるいは終焉という評価も確たるものにしつつある時代を迎えている、と言えるでしょうか。 トッド氏が、身近なEUとフランス批…

ベーシックインカムでなくベーシックサービスで人を救えるか:金子勝氏著『人を救えない国』より-2

社会的排除の理由がさまざまなのに、所得だけに注目して一律に現金を給付しても貧困がなくならないことはいうまでもない。 それゆえ、その人の「ニーズ(必要)」に合わせて問題を解決するためには、生活圏である地域において当事者に寄り添う対人社会サービ…

見えない分散革命ニューディール実現の政治的シナリオ:金子勝氏著『人を救えない国』より

冒頭、金子氏は、新型コロナウイルスの大流行がこれまでの産業や社会システムに大きな影響を与えていくとし、その大きな変化の底流として、今、産業や技術の大転換期にあることを提示。 その中で、以下の3つの技術が軸になっていることを強調します。1)歴…

母子・父子世帯の貧困と子育て家庭環境の改善をもたらすベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-5

生活保護受給要件を満たすけれど申請せず、困窮した生活を送っている人々の典型的な例が、母子世帯・父子世帯と言われています。 その世帯の多くは、育児の負担や家族資源の乏しさから、労働時間に制約を受け、やむなく非正規職として働かざるをえない状況に…

資本主義の終焉への対応、閉じた帝国の実現、正義の政治経済学の実証は可能か:水野和夫氏の著述から

行き過ぎた資本主義、という考え方は、既に広く取り上げられ、理解されていることですが、水野氏による基本認識を、まず、本書の<第3章 日本の未来をつくる脱成長モデル>の冒頭の文章を引用して紹介します。資本主義の終焉を指摘することで警鐘を鳴らした…

子どもの貧困解消と幸福度の向上に寄与するベーシック・ペンション児童基礎年金:BP法の意義・背景を法前文から読む-4

教育費の負担軽減として、2019 年 10 月から幼児教育・保育の無償化、2020 年度から私立高等学校授業料の実質無償化と高等教育無償化が始まった。 これらにより家族関係社会支出対GDP比は 1.9%程度へ上昇し、概ねOECDの平均水準(2.1%)に近付いて…

コロナ禍、結婚テーマの日経インターネット調査で考える、早期の少子化・結婚対策提言

日本は結婚しないと子どもを持たない傾向があり、婚姻の減少や先送りは少子化の加速に響く。コロナ禍の収束が見通せない中でも結婚する人が増えるには、どんな支援が必要か。 コロナの影響で、出生数・婚姻数が激減している状況を背景に、こんな観点から行っ…

少子化対策に必須のベーシック・ペンションと地方自治体の取り組み拡充:BP法の意義・背景を法前文から読む-3

<少子化社会の要因としての結婚・出産・育児等における経済的不安> 2019年の合計特殊出生率が1.36を記録し、年間の出生数は87万人割れ、人口減少数も50万人超と、11年連続で減少を続けています。 特に、非婚化・未婚化及び晩婚化による出産数の減少、持ち…

望ましい2050年社会に向けての少子化対策への助走:自然な生き方として結婚し子どもを持つということ

山口慎太郎氏による『「家族の幸せ」の経済学~データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』。 その中の「第1章 結婚の経済学」にあった見出しと記事中の表現からいくつか引っ張ってきました。 ・「再婚男性と初婚女性」の組み合わせが「再婚女性と初婚…

子ども庁創設よりも優先すべき、政治・内閣改革:「子ども庁、何を優先すべきか」よりー4

優先すべきは、多くの問題を抱える日本の子どもの保育・教育サービスをどのように整備・拡充していくのか、その子どもを持つ、あるいは子どもを持ちたいと願う大人・親の結婚・出産・子育てをどのように支援していくのかという根本認識と長期的なビジョンを…

ベーシックインカムを「一億総生活保護」と考える左派学者の愚

左派においてもまともに、ベーシックインカムについてしっかり取り組み、政策や法律次元での提案まで持ち込む例も見ることができません。 どうしても、完全雇用を理想とすることから脱して、あるいは、経済至上主義からも脱して、社会保障や基本的人権として…

就学前保育支出の重要性を示すも命題には応えず:「子ども庁、何を優先すべきか」よりー3

「子ども支援政策」の中で支出規模が最大なのは「就学前教育・保育」(保育所・幼稚園などへの支出)で、約4割を占める。 その中で「保育所への支出」は、女性の就業率の上昇や保育の無償化に伴い拡大している。 その「保育」は、子どもたちや日本社会に、短…

生活保護制度を超克するベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-2

<生活保護の運用と実態> 憲法第25条に定める「最低限度の生活を営む権利」を保障する社会福祉制度の一つに、生活保護制度とその法律である「生活保護法」があります。 しかし、この生活保護法の運用について、受給要件を満たす人の多くが、受給申請手続き…

5歳児幼児義務教育化と0~2歳乳幼児への幼児教育化を:「子ども庁、何を優先すべきか」より-2

日経<経済教室>で6月1日から3回にわたって「子ども庁、何を優先すべきか」というテーマで、3人の研究者に拠る小論が掲載されました。 このところ少子化対策に焦点を当てて、継続して投稿してきていることもあり、そのシリーズを一つずつ取り上げ、その…

貧困世帯の子どもたちへの教育投資をどう優先させるか:「こども庁、何を優先すべきか」より-1

日経<経済教室>で6月1日から3回にわたって「子ども庁、何を優先すべきか」というテーマで、3人の研究者に拠る小論が掲載されました。 このところ少子化対策に焦点を当てて、継続して投稿してきていることもあり、そのシリーズを一つずつ取り上げ、その…

憲法の基本的人権に基づくベーシック・ペンション:法の意義・背景を法前文から読む-1

1)ベーシック・ペンションは、日本国民に与えられた基本的人権と自由・平等に基づき支給される2)世帯ではなく個人に、平等に支給されるベーシック・ペンション3)生存権保障を目的とした生活保護制度は、ベーシック・ペンション生活基礎年金への拡充で…

2022年施行改正育児・介護休業法は、少子化対策に寄与するか

今回成立した改正育児・介護休業法の要点を。 1. 2022年4月施行内容:産休・育休の取得意向の確認を企業義務化等 ・「男性版産休」と位置づけられ、男性が子どもの生後8週間以内に最大4週間の育児休業をとれるようになる・これまで原則1回だけだった育休を…

日本独自のベーシック・ペンションを社会的共通資本のモデルに:社会的共通資本とベーシック・インカム-2

前回◆ 社会的共通資本とは:社会的共通資本とベーシック・インカム-1(2021/6/8)で、宇野弘文氏(故人)が提起した『社会的共通資本』とはどういうものか、どういう考え方で構成・構築しているものかを確認しました。 そこでは、以下の3種類に社会的公共…

少子化を援護する?一人で生きるのが当たり前の独身大国ニッポン

多くの男性にも結婚せずに単身で生きることを勇気づけたのが『超ソロ社会』であったと感じています。 そして、それを一歩(以上、大きく)進めるであろう著が『「一人で生きる」が当たり前になる社会』です。 なにより、既婚者、結婚経験者のすべてが単身生…

社会的共通資本とは:社会的共通資本とベーシック・インカム-1

宇野弘文氏が提起する「社会的共通資本」の定義と特徴について、以下に抽出しました。 1)一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にする…

少子化対策総動員、全力で支え、あらゆる対策を:少子化対策連呼の日経社説の意識は高いのか低いのか

先日、日経が「少子化」問題について・3月7日:「出生激減に対策総動員急げ」・6月1日:「出生の反転増加へ若者らを全力で支えよ」と、2つの社説で論じていることを捉えて◆ 日経提案の少子化対策社説と記事から考える(2021/6/1)という記事を投稿しま…

国民民主党の日本版ベーシック・インカム構想は、中道政策というより中途半端政策:給付付き税額控除方式と地域仮想通貨発行構想

ベーシックインカム(以降BIとすることがあります)、あるいは当サイトが提案するベーシック・ペンション(以降BPとすることがあります)が実現するには、政治が変わる必要がある。望ましいBI(またはBP)を公約とする既存政党が現状ないため、そして特定政…

エマニュエル・トッド氏が見る日本の少子化対策問題

山田昌弘氏著の『結婚不要社会』(2019/5/30刊)を取り上げて投稿した記事◆ 結婚不要社会と結婚困難社会の大きな違い:『結婚不要社会』から考える(2021/6/3)を受けて、今回は、エマニュエル・トッド氏と朝日新聞の3記者とのインタビューからの書き起こし…

6月4日付日経コロナ禍積極財政関連2記事をベーシックインカム絡みで読む

ベーシックインカムが論じられるときに課題とされるの財源問題と関連する、興味深い2つの記事が、6月4日付け日経に掲載された。「未完に終わった積極財政 高橋是清の無念」と題した経済記者による記事と「国債は将来世代の負担なのか」と題したあるエコノミ…

結婚不要社会と結婚困難社会の大きな違い

前著から1年遡って出版されたのが『結婚不要社会』(2019/5/30刊)。 前著において、少子化の要因として、一応は経済的要因、将来にわたっての子育て・教育に必要な費用負担への不安等を上げていました。それは、当然、結婚生活・家族生活における経済的不…

「生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文」解説、始めます

日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金制度の法律案「生活基礎年金法(別名ベーシック・ペンション法)案」の制定の目的・背景などを記した「前文案」は、以下の21の小項目で構成し、ベーシック・ペンション導入の目的・背景、…

日経提案の少子化対策社説と記事から考える

「最も大切なのは雇用対策。仕事を失う可能性があったり収入が伸びそうになかったりすると、若年層は結婚や出産を先送りする。将来も安心して働き続けられると思ってもらえることが、少子化を克服するカギ。」 そうそう、それです。失う可能性も当然のことな…