経済

ベーシック・ペンション、次の課題は、過剰流動性を巡る諸問題考察

「公共貨幣」は「債務貨幣」の対立概念として用いられた 公共貨幣は、元来政府貨幣という意味を持つものであり、理論構築上、無尽蔵に政府債務を増やし続ける民間銀行の信用創造という欠陥システムを示す概念として用いた「債務貨幣」の対立概念の意味を持つ…

「公共貨幣論」の理解考察とベーシック・ペンション構築への活用を目的とした全20回シリーズ、終えました。

先々月6月初めに、・山口薫氏著『公共貨幣』(2015/9/24刊・東洋経済新報社)・山口薫氏・山口陽恵氏共著『公共貨幣入門』(2021/10/12刊・集英社インターナショナル新書)の2冊を、以下のブログで紹介。 ◆ この社会経済システム改革に必要な何かがまだ描…

公共貨幣が生みだす新しい国と社会とは:公共貨幣論から考える-18

最終章に来ましたが、そのタイトルにある「新国生み」という表現を未だにしっくりと受け止められない状態での整理・考察作業になります。公共貨幣を実現すべくたどる方法としての「新国生みイニシアティブ」。(この「イニシアティブ」という表現が「新国生…

「公共貨幣法案」に見る政治行政及び社会経済システム視野狭窄症と消化不良:公共貨幣論から考える-16

今回からの【第4フェーズ】の構成を変更しました。以下のように、『公共貨幣』『公共貨幣入門』両方の書に<公共貨幣システムへの移行>という構成があります。前者では【部】として配置していますが、内容は、公共貨幣システム理論化までのプロセスを列記…

ユートピア論に変わってしまった公共貨幣理論経済学:公共貨幣論から考える-15

この『公共貨幣』「第Ⅱ部 公共貨幣システム」<第11章 公共貨幣で輝く未来>は、最後の【第4フェーズ】で予定している『公共貨幣入門』<第5章 公共貨幣で新国生みイニシアティブ>と一部内容が重なっています。タイトルからイメージできるように、公共…

公共貨幣システムで、本当に政府債務もインフレも失業もなくなるのか:公共貨幣論から考える-14

「公共貨幣システム」は、国の借金を無限地獄に落ちるように増やし続ける欠陥をもつ「債務貨幣システム」を改革する、理想の貨幣システムです。しかし、その理想実現のプロセスにおいて、政府債務である国の借金をゼロにする必要があります。どのようにすれ…

公共貨幣理論の原型であるシカゴプランの政治的実現可能性が奪われた謎:公共貨幣論から考える-12

この【第3フェーズ】『公共貨幣』「第Ⅱ部 公共貨幣システム」では、山口氏が構築した公共貨幣理論の誕生までの経緯と、公共貨幣理論自体の内容を示しています。その手始めが<第8章>で、その理論の基本的な考えに導かれたきっかけとなったステファン・ザ…

公共貨幣論よりも広まったMMTへの怨念はらむ批判が残念

この項は、その考え方を詭弁として批判する激しい口調から始まります。2021年の米国貨幣研究所主催・第8回貨幣改革国際会議時に山口氏グループがMMTグループと行った激論後、同グループは貨幣改革グループから決別。その後、山口氏がMMTの動向にほとんど注意…

新古典派経済学、ケインズ経済学の破綻とその要因:公共貨幣論から考える-10

このシリーズの目的は、経済学理論を学ぶことが直接の目的ではなく、公共貨幣論の有効性と問題点をできるだけ理解し、ベーシック・ペンションの提案に適切に利用・反映できないかを検討すること。そのために、山口氏が公共貨幣理論構築・提案に至った理由を…

2021年度税収67兆円、過去最高を更新

7月1日付日経及び中日、両紙で目にした、「2021年度国の税収、過去最高の67兆円」という見出し。提案している、ベーシック・ペンションとの関係で、こうした財政に関する動向には、興味関心が高く、同日付と1日空けての7月3日付の以下の日経の2記事を…

続く借金地獄と日本の3つの破局シナリオ

日本の失われた30年で積み上げた政府の借金は、2019年現在の国・地方の長期債務残高では1106兆円。国民一人当たりでは877.8万円。2019年の政府の歳入のうち、税収が62.5兆円(因みに、速報値の2021年の税収は過去最高を更新し67兆円)で、歳出のうち国債費が…

現状の債務貨幣システムの欠陥と宿命をどのように理解してもらうか:公共貨幣論から考える-7

◆ <「公共貨幣」論から考えるベーシック・ペンションと社会経済システム>シリーズ開始にあたって(2022/6/15)を序論として開始した、・山口薫氏著『公共貨幣』(2015/9/24刊・東洋経済新報社)・山口薫氏・山口陽恵氏共著『公共貨幣入門』(2021/10/12刊…

権力の支配手段としてのお金の正体:公共貨幣論から考える-5

権力と支配の質的転換 ここまでの論述では、権力の支配の主体が、銀行にあることに重点を置いてきています。その手段が、民間の中央銀行と部分準備銀行制度であったとしているわけですが、ここに至るまでに巧妙に進化してきたと話を進めます。それが「金が金…

部分準備銀行制度と債務貨幣システム

信用貸出、信用創造を現状可能にしているのは、違法行為からではなく、れっきとした「部分準備銀行制度」という法律で規定されているからです。こうして無から創られた預金、要求払預金は、利息付きで貸し出されたものであり、政府といえども民間が創り出す…

『公共貨幣』「第Ⅰ部 債務貨幣システム」<第3章 日本銀行は必要か>より

・山口薫氏著『公共貨幣』(2015/9/24刊・東洋経済新報社)・山口薫氏・山口陽恵氏共著『公共貨幣入門』(2021/10/12刊・集英社インターナショナル新書)を参考にして「公共貨幣」論のベーシック・ペンションへの組み込みの可能性と方法等を考える<「公共貨…

4つの機能を持つ貨幣、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」「日本銀行法」:公共貨幣論から考える-2

現在日本国内で流通しているお金は、次の3種類。1)政府貨幣(百円玉等の鋳貨、コイン)2)日本銀行券(千円札等)3)預金(銀行の預金口座にある信用のデジタル数字)この3種類で、財やサービスの交換、支払い決済・決算が行われるが、1)2)が現金…

<「公共貨幣」論から考えるベーシック・ペンションと社会経済システム>シリーズ開始にあたって

◆ この社会経済システム改革に必要な何かがまだ描けていない。山口薫氏著『公共貨幣』『公共貨幣入門』:勝手に真剣書ー17(2022/6/3)で紹介した・山口薫氏著『公共貨幣』(2015/9/24刊・東洋経済新報社)・山口薫氏・山口陽恵氏共著『公共貨幣入門』(20…

インフレ率2%達成の鍵は、格差解消の決定打「ベーシックインカム」である理由

こんなテーマでの小論が、ほぼ1年前の8月、ダイヤモンド・オンラインで配信されました。⇒ インフレ率2%達成の鍵は、格差解消の決定打「ベーシックインカム」である理由 | 山崎元のマルチスコープ | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp) 今回急に、経済…

トラクターをFCV(Fuel Cell Vehicle)水素燃料電池車に

トヨタのFCVはなかかな広がりを見せていません。最大のネックの一つが、水素燃料を補給する水素ステーション設置の高コストと普及台数の少ないこと。相互に関係している要因なので、どこかの時点でブレイクスルーことも、現状ではイメージできない。そうした…

忘れられていた異次元金融緩和政策に基づく2%物価上昇目標が、5月、いとも簡単に実現

ウクライナ侵攻がそうした現実に拍車をかけ、日本においては、あの、長く掛け声だけであり、その責任論も有耶無耶になっていた物価上昇率2%という目標が、いとも簡単に実現してしまいました。基本的には、各種資源と原料・原材料、製品・商品の需要と供給…

山口慎太郎氏著『子育て支援の経済学』:勝手に新書-7

今月初め、https://2050society.com に ◆ 2021年の出生数約84万人、死亡数約145万人、人口減少数初の60万人超:2021年人口動態統計速報値(2022/3/2)と題した記事を投稿しました。少子高齢化社会の進行は、高齢化により減少する出生数を遥かに上回る死亡数…

ベーシック・ペンション導入によるインフレリスクと対策を考える:ベーシック・ペンション実現へのヒント-3

過剰流動性の発生がインフレの一因となるとされています。すなわち、現在アメリカ・バイデン政権によるバラマキが、インフレを招き、FRBが引き締めに入っている状況がその端的な事例です。バラまかれたカネで購買意欲が高まり、求人も増え、労働力不足により…

都市生協における消費者と生産者の結びつき

次にイメージできるのは、やはり都市部を中心に強く根付いている生活協同組合の組織化・ネットワーク化。 共同購入や組合員宅への配達は、消費者と生産者との結びつきを重視し、前提とした「食と農」の生活として定着し、現在の多種多様なローカル・フードシ…

DX、進めれば進めるほどクラウドサービスへの支払いで経常赤字増の日本の脆弱性

構造改革という言葉を用いることが適切とは思わないが、要は、今後もクラウドサービスのニーズは、国内に限っても拡大し続けることは間違いないはず。 であるならば、そのための供給体制の整備・拡充を、半導体事業と並んで、国家プロジェクトとして、産官学…

賃金停滞をもたらすと憶測可能な定性的要因

2小論の中に、憶測レベルでの賃金停滞要因が、少しはありました。 それも含めて、賃金停滞の定性的要因と思われるものを、以下にメモしてみました。 1)正規雇用者比率・数の低下・減少と非正規雇用者比率・数の増上昇・増加2)高齢者雇用延長に伴う現役…

コロナ禍、多くのアジア諸国のインフレ無縁の理由と日本の特殊性

昨日2021年12月1日付日経に、日経グループ企業でもある英国Financial Times 紙2021/11/26掲載の アジア・エディター ロビン・ハーディングによる「インフレ無風のアジア」というタイトルの記事が載った。 短い記事だが、分かりやすく翻訳されており、興味深…

愛知県の県民割、「あいち旅eマネーキャンペーン」を利用

県民割とは、都道府県などが域内での旅行費用や飲食等消費購買費用等を住民に補助する制度。 苦境が続く旅行業界の救済や停滞する消費の活性化を目的とした、国によるGoTo トラベルの地域版といえるこの県民割。 特徴は、当然、実施都道府県に住む住民だけが…

具体性がない、薄い主張・反対意見展開の「論説」の重さはイカほど?

資本主義の在り方を議論することは、今に始まったものではなく、延々と続けられてきている。 現在は、資本と富の寡占化・集中、格差の拡大が昂じたことによる「行き過ぎた資本主義」がグローバル社会における共通命題になっているわけだ。 この続きは「「新…

「新しい資本主義実現会議」と関連する多種類の組織構成

「新しい資本主義実現会議」は、菅義偉政権下による「成長戦略会議」を廃止し、その機能を取り込んだと日経。 確かに、岸田政権のスローガンの一つは「成長と分配」だから、成長が必須課題。 その新しい「新しい資本主義実現会議」は、一体どう機能させるの…

政府構想の介護職・保育職賃上げ方法

政府の考えでは、1)まず、(早ければ)来年2月から一定期間の賃上げ分を交付金として一括支給する。 申請手続きを必要とするため、実際に本人に支給されるのは来年春以降になる見通し。2)2022年度後半からは、介護事業所などが受け取るサービスの対価に…