2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

経済成長主義に基づく子育て支援政策の限界:山口慎太郎氏「子育て支援論」から考える-4(総括)

日本を含め世界各国で多様・多面に展開されてきた「育休制度」や「保育改革」の実証分析や効果評価は、当然のように、一色に染められた結果を導き出してはおらず、却って、政策の選定・決定が難しいことを示すことになっています。それはあたかも、EMBPとは…

子育て支援は女性活躍が目的なのか?:山口慎太郎氏「子育て支援論」から考える-3

長すぎる育休は誰のため、何のため?3年抱っこし放題のいい加減さ(第9章から) 本章の冒頭、2013年当時の首相が「3年間抱っこし放題」と馬鹿なことをほざいて批判を浴びた件を持ち出して、<長すぎる育休は逆効果?>というテーマの露払いとしました。そ…

親にとって子育ては次世代への投資か?:山口慎太郎氏「子育て支援論」から考える-2

「子育て支援は、次世代への投資」。これは決して、子どもを持つ、あるいは子どもを持ちたいと思う親の気持ち・心情・想いを表現したものではないでしょう。まあ、一部の封建的・家父長制的感覚をいまだに抱く親が、将来子どもが親の面倒をみるものと思って…

現金給付・育休制度で出生率は向上するか:山口慎太郎氏「子育て支援論」から考える-1

今回からは、前回に続き、同類書である山口慎太郎氏『子育て支援の経済学』(2021/1/20刊・日本評論社)『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(2019/7/30刊・光文社新書)を用い、同様に<山口慎太郎氏「子育て支援論」…

子育て・保育の本質から考えるべき政治行政と財政政策:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-5(総括)

子育て政策の効果を前提としたために、経済政策としての子育て支援論になってしまった感が否めない本書。具体的な子育て政策課題については、解説書として発行された新書『子育て支援と経済成長』の<第5章 子育て支援の政策効果>に関連する記述を読み取る…

増税・財源確保の子育て支援政策のムリ筋:柴田悠氏「子育て支援論」から考える-4

<第9章 政策効果の予測値>から これを受けて、第3章から第8章まで、個別政策に関する仮説・検証作業を経て、最後にそれら社会保障政策(=変数)が及ぼすとみられる効果を、具体的数値予測化したのが本章です。筆者は、社会保障政策と表現していますが…

柴田悠氏著『子育て支援は日本を救う』『子育て支援と経済成長』から考える子育て・少子化対策論-3

少子化対策への関心度の低さ 随分機械的で無機的な仮説検証作業とその結果、という印象を抱くのは、柴田氏自身が、出生数の減少・少子化対策を子育て支援の枠内に位置付けてはいないのでは、と思わせられるからです。 例えば、非婚化・晩婚化がもたらす出生…

保育サービス支出総額だけの統計論のムリ筋:子育て柴田悠氏「子育て支援論」から考える-2

今月初めに、投稿したブログ◆ 柴田悠氏著『子育て支援が日本を救う』『子育て支援と経済成長』:勝手に新書-8(2022/5/1)で、柴田悠氏著『子育て支援が日本を救う(政策効果の統計分析)』(2016/6/25刊・勁草書房)『子育て支援と経済成長』(2017/2/28…

ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-4

「生活福祉資金の特例貸付」とは この制度は2020年3月にスタートした、無子・保証人不要の貸付金制度で、元来あった「緊急小口資金」と「総合支援資金」の貸し付け条件を大幅に緩和。 社会福祉協議会(社協)職員が面談して収入や返済計画を確認していたも…

ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-3

健康保険の違いによる子どもの受診日数の違いと所得格差 健保には、大企業の社員などが入る組合健保、公務員などの共済組合、自営業者や非正規労働者らの市町村国保などの種別がある。ここでも、未就学児の受診日数に違いがあり、市町村国保の受診は2021年以…

生活保護世帯の子どもの進学率に地域格差:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-2

2019年、2020年の調査では、全世帯の中に占める生活保護世帯の進学率は ・上位の東京都や大阪府が両年度とも40%超・最下位は2019年度が山形県の16.7%、2020年度が長野県の11.1%。・首位と最下位の格差は、前者は2.8倍、後者が4.1倍に至った。・全世帯進学…

2022年2月生活保護受給164万世帯、現役世代も増加:ベーシック・ペンション導入が望まれる社会-1

2022/5/15付日経に「生活保護、現役世代も増加 コロナ禍に高水準続く 2月164万世帯、就労支援の強化急務」と題した記事が掲載されました。 これは、5月11日厚生労働省公表の、今年2月時点の生活保護受給世帯数・速報値に基づくもの。その世帯数は、前年同月…

自由主義・強権主義政治体制の分断化が促すエネルギー転換方法の変化

2022年に考える、日本の2050年エネルギー・資源社会への道筋-4 本文から分かるように、受け入れ基地の確保・新設による対策を含め、ロシア産天然ガスの代わりとなる供給先の確保も行うわけで、一方通行的に化石燃料使用期限を先延ばすという捉え方は正確で…

単純に、脱化石燃料・脱炭素化の困難性による原発回帰を持ち出すべきではないエネルギー不安対策

2022年に考える、日本の2050年エネルギー・資源社会への道筋-3 【2022年に考える、日本の2050年エネルギー・資源社会への道筋】シリーズを、後述する「ダニエル・ヤーギン著『新しい資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略」シリー全4回…

2022年に考える、日本の2050年エネルギー・資源社会への道筋-2

高まるエネルギー不安-1:欧州よりロシアに影響は深刻 初めは、2022年4月22日掲載のニック・シッター中央ヨーロッパ大学教授の小論です。 ロシアのウクライナ侵攻は欧州のエネルギー市場に不可逆的な変化をもたらした。戦争がどんな結末になろうと、欧州…

ダニエル・ヤーギン著『新しい資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略-4

予言・警告どおり、2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、プーチンの都合の良い思い込みとは裏腹に今なお、先が見通せない困難な状況が続いています。自由主義・民主主義国家群対強権・専横主義国家群との一層の分断と衝突の様相を、まさにエネル…

習近平・中国の野望、多様な背景にある中東のエネルギー戦略事情:ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略-2

今回は2回目で、<第3部 中国の地図>と<第4部 中東の地図>を取り上げます。 ヤーギンがまず描く中国の地図は、2つの国で世界のGDPの約40%、軍事費の約50%を占める、非公式のグループ構成概念、G2。もちろんそれは、米国と中国のグローバル社会に…

米国の新しい地図と古い地図に戻そうとするプーチン・ロシア:ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略-1

別サイトで◆ すべての国会議員が読むべき書。ダニエル・ヤーギン氏著『新しい世界の資源地図』:勝手に新書-9(2022/5/2)という記事で、ダニエル・ヤーギン氏著、黒輪篤嗣氏訳の『新しい世界の資源地図 エネルギー・気候変動・国家の衝突』(2022/2/10刊…