2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2002年から2021年までに発刊され、入手した社会保障関連書を比較・概括する

<鈴木亘氏>1970年生、学習院大学経済学部教授、日本銀行入行経歴あり 一見?一読、新自由主義的立場にある学者かと思うフシもありますが、政権批判や官僚批判も強烈で、疑問点も多いが、賛同できる点も多々ある。 そう感じさせられた書ではありました。 当…

2002年小沢修司氏著から2021年宮本太郎氏著までの間、社会保障・福祉制度はどう変わったか

そして小沢氏は、現存する企業中心社会を確認しつつ社会保障改革の必要性を主張し、主に国民負担の面からアプローチして方策を検討しますが、企業からの個人の自立を掲げるレベルにとどまっています。 それにより、その方策として「ベーシック・インカム」を…

25年前に描かれた、国民負担増という社会保障制度改悪へ進む日本

前章で、社会保障制度の見直しが必要とされる社会経済状況に至ったことを問題提起し、その根拠として、家族と労働の視点からの変化・変容を指摘。 それは、企業を軸とした社会保障制度に関する問題提起であり、被用者が負担する個人所得課税に絞った議論にと…

社会保障制度審議会1995年勧告に関係なく悪化を続けてきた社会保障制度

小沢修司氏により2002年に出版された『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』(2002/10/30刊)。 同書を、今月11日に中古書で入手し斜め読み。21日に読み終え、どのように取り上げるかを検討し、前半の[Ⅰ 企業中心社会と社会保障制度…

ベーシックインカムは、ユートピア・アイディア?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー7

現状、ヨーロッパ各地で問題が顕在化し、コロナ禍やアフガン問題もあり、より複雑化・長期化しつつある移民問題。 移民に反対する人々の思い・感情を、ブレグマンは否定するのでしょうか。 彼が住むオランダは、移民を快く受け入れ、貧困問題の解決に、国民…

AIに人類愛はありませんか?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー6

<研究者が1ドル儲けると、5ドル以上が経済に還元される>というタイトルが付いた節が、本章の後半に出てきます。 その前に出てきたのが、NYのごみ収集員に対して、アイルランドの銀行員のストライキとその結果の話。 数えきれない多くの人々が、仕事人生…

ベーシックアセットの前に社会保障政治改革を:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー6

準市場と社会的資本について、これまでの記事と重複しますが、思うところを簡潔に述べておきたいと思います。 準市場の実態は、貧困・介護・育児それぞれの領域で異なることがまず一つ。 そして、真の社会民主主義福祉国家を目指す宮本氏の立場では、今後、…

GDPや経済学者を信じるな!?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー5

本書の中で、最も私が評価したい章が、この章です。 現在のベーシックインカム論において、その支給総額を考える時、インフレを懸念する議論が比較的重要になっています。 その総額が、GDPのどの程度の比率を占めるかが問題とされているのです。 私も、ベー…

理念・構想・指針としてのベーシックアセット、現実性・実現性は?:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-4

<社会的投資>とは、人々の力を引き出し高めながら社会参加を広げていく福祉のかたちをいい、 生活困窮者自立支援制度を例に取ると、行政が生活困窮者を一方的に保護するのではなく、包括的相談支援で必要なサービスや所得保障につなぐことをめざす方式、と…

スピーナムランド制度捏造報告書が、誤った社会保障制度の歴史を作ってきた:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー4

スピーナムランド制度捏造報告書が、誤った社会 保障一旦公開され、広まったこの報告書は、政府の意思決定のための複雑で大規模な組織的な調査に基づくものであったことからも、その後長く社会科学の権威ある資料とされます。 そして、なんとカール・マルク…

政治的対立軸を超克した育児・保育政治を:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー5

3類型化とそれらに属する国家群は、スウェーデンの社会学者ヴォルター・コルピに拠るが、近年、一般家族支援型が両性就労支援型へ、保守主義的一般家族支援型から社会民主主義的両性就労支援型へ、両性就労支援型内での両性の子育てケア重視化など、社会経…

20世紀アメリカでベーシックインカムが実現するチャンスがあった!:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー3

本書の全体を通じての特徴の一つが、ほとんどのベーシックインカム論書と同様、これまでの各国・各地でのベーシックインカム的実験例を紹介し、その有効性・有意性を主張していることです。 それが、本章でも展開されます。 初めに、1)<ホームレスに3000…

利用者視点での介護保険制度評価が欠落した介護政治論:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー4

もう日常用語化・時事用語化している、老老介護、認認介護、介護離職、介護殺人、ヤングケアラー、8050問題、仕事と介護の両立などがまず思い浮かびます。 介護の現場に関しては、介護人材不足、低賃金と労働条件・労働環境問題、高い離職率、高い介護職の有…

貧困政治とベーシックインカム、ベーシックアセット:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-3

宮本氏は、小沢修司氏と原田泰氏両氏のベーシックインカム提案を紹介し、若干の比較を記しており、以下に整理してみました。 なお、小沢氏は、日本におけるベーシックインカム論の古典と言える『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』…

貧困政治での生活保護制度と困窮者自立支援制度の取り扱いに疑問:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー3

一つは、当然視されていた家族とコミュニティの役割が少子高齢化・未婚率の高まりと単身世帯化、地方の人口減少などで機能しなくなっていること。 その事情は、前回の記事内でも述べました。 それを家族主義幻想、コミュニティ幻想と私は言っています。 加え…

過去最大の繁栄の中の最大の不幸とユートピア:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー2

完全ベーシックインカムではなく、極小・部分ベーシックインカムかベーシックインカム的実験の事例紹介の提示にとどまるそれらの多くに、合理性・合目的性・実現可能性が果たして存在するのか。 法律に仕上げる、あるいは、そのための政治・行政プロセスをデ…

増加・拡大する「新しい生活困難層」:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー2

宮本太郎氏著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021/4/9刊) を参考に、社会保障政策視点からは、当サイトで、ベーシックインカムの観点からは、 http://basicpension.jp でシリーズ化して投稿を始めています。 ベーシックペンシ…

ベーシックアセットとは?:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-2

宮本太郎氏著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021/4/9刊) を参考に、社会保障政策視点からは、親Webサイト https://2050socitey.com で、ベーシックインカムの観点からは当サイトで、シリーズ化して投稿を始めています。この…

福祉資本主義の3つの政治的対立概念を考える:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』序論から

宮本太郎氏の近著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』 貧困、介護、育児という社会政策上及び社会保障・福祉制度上の重要な課題領域を「政治」として考える書。 私自身は、介護行政、保育行政などのように「行政」と組み合わせて考察…

リトガー・ブレグマンの「隷属なき道」、その道標

リトガー・ブレグマンの「隷属なき道」、その道標 – 日本独自のBI、ベーシック・ペンション (basicpension.jp)

異常が日常化した2021年8月の購読書メモ

『ポストコロナの「日本改造計画」』 に取り組み、 あるべき『貧困・介護・育児の政治 』を取り戻し、『安いニッポン』 と 『「日本型格差社会」からの脱却』を図り、 『隷属なき道』 を歩み、 『強くて優しい国』 を創造する21世紀となしうるか。 そのため…