ベーシック・インカム

ゴルツの時短・時間解放社会と社会的排除の本質とBI論との結びつき:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-3

小沢氏が本書を執筆している時期にはまだ活動していたゴルツ。 彼の考えの軸になっているのが、急速に進む情報化・ハイテク化などの高度情報・サービス化社会=労働生産性の高度な発展とその市場経済化の結果として、社会的必要労働が減少していく中、労働に…

負の所得税、参加所得、社会配当。BIに類似した最低限所得保障構想:小沢修司氏2002年著『ベーシック・インカム構想の新地平』から-2

これまで当サイトでは十分取り上げることがなかったベーシックインカム構想の系譜。 本書が最も詳しく整理されていたものであったことで、先ず当サイトにとっても有意義だったと思います。 内容的には、まだ小沢氏自身の構想に至ってはいないため、評価・感…

2002年小沢修司氏著から2021年宮本太郎氏著までの間、社会保障・福祉制度はどう変わったか

そして小沢氏は、現存する企業中心社会を確認しつつ社会保障改革の必要性を主張し、主に国民負担の面からアプローチして方策を検討しますが、企業からの個人の自立を掲げるレベルにとどまっています。 それにより、その方策として「ベーシック・インカム」を…

ベーシックインカムは、ユートピア・アイディア?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー7

現状、ヨーロッパ各地で問題が顕在化し、コロナ禍やアフガン問題もあり、より複雑化・長期化しつつある移民問題。 移民に反対する人々の思い・感情を、ブレグマンは否定するのでしょうか。 彼が住むオランダは、移民を快く受け入れ、貧困問題の解決に、国民…

AIに人類愛はありませんか?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー6

<研究者が1ドル儲けると、5ドル以上が経済に還元される>というタイトルが付いた節が、本章の後半に出てきます。 その前に出てきたのが、NYのごみ収集員に対して、アイルランドの銀行員のストライキとその結果の話。 数えきれない多くの人々が、仕事人生…

ベーシックアセットの前に社会保障政治改革を:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー6

準市場と社会的資本について、これまでの記事と重複しますが、思うところを簡潔に述べておきたいと思います。 準市場の実態は、貧困・介護・育児それぞれの領域で異なることがまず一つ。 そして、真の社会民主主義福祉国家を目指す宮本氏の立場では、今後、…

GDPや経済学者を信じるな!?:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー5

本書の中で、最も私が評価したい章が、この章です。 現在のベーシックインカム論において、その支給総額を考える時、インフレを懸念する議論が比較的重要になっています。 その総額が、GDPのどの程度の比率を占めるかが問題とされているのです。 私も、ベー…

理念・構想・指針としてのベーシックアセット、現実性・実現性は?:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-4

<社会的投資>とは、人々の力を引き出し高めながら社会参加を広げていく福祉のかたちをいい、 生活困窮者自立支援制度を例に取ると、行政が生活困窮者を一方的に保護するのではなく、包括的相談支援で必要なサービスや所得保障につなぐことをめざす方式、と…

政治的対立軸を超克した育児・保育政治を:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー5

3類型化とそれらに属する国家群は、スウェーデンの社会学者ヴォルター・コルピに拠るが、近年、一般家族支援型が両性就労支援型へ、保守主義的一般家族支援型から社会民主主義的両性就労支援型へ、両性就労支援型内での両性の子育てケア重視化など、社会経…

20世紀アメリカでベーシックインカムが実現するチャンスがあった!:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー3

本書の全体を通じての特徴の一つが、ほとんどのベーシックインカム論書と同様、これまでの各国・各地でのベーシックインカム的実験例を紹介し、その有効性・有意性を主張していることです。 それが、本章でも展開されます。 初めに、1)<ホームレスに3000…

貧困政治とベーシックインカム、ベーシックアセット:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-3

宮本氏は、小沢修司氏と原田泰氏両氏のベーシックインカム提案を紹介し、若干の比較を記しており、以下に整理してみました。 なお、小沢氏は、日本におけるベーシックインカム論の古典と言える『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』…

過去最大の繁栄の中の最大の不幸とユートピア:リトガー・ブレグマンの『隷属なき道』ー2

完全ベーシックインカムではなく、極小・部分ベーシックインカムかベーシックインカム的実験の事例紹介の提示にとどまるそれらの多くに、合理性・合目的性・実現可能性が果たして存在するのか。 法律に仕上げる、あるいは、そのための政治・行政プロセスをデ…

増加・拡大する「新しい生活困難層」:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』からー2

宮本太郎氏著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021/4/9刊) を参考に、社会保障政策視点からは、当サイトで、ベーシックインカムの観点からは、 http://basicpension.jp でシリーズ化して投稿を始めています。 ベーシックペンシ…

ベーシックアセットとは?:ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-2

宮本太郎氏著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021/4/9刊) を参考に、社会保障政策視点からは、親Webサイト https://2050socitey.com で、ベーシックインカムの観点からは当サイトで、シリーズ化して投稿を始めています。この…

福祉資本主義の3つの政治的対立概念を考える:宮本太郎氏『貧困・介護・育児の政治』序論から

宮本太郎氏の近著『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』 貧困、介護、育児という社会政策上及び社会保障・福祉制度上の重要な課題領域を「政治」として考える書。 私自身は、介護行政、保育行政などのように「行政」と組み合わせて考察…

リトガー・ブレグマンの「隷属なき道」、その道標

リトガー・ブレグマンの「隷属なき道」、その道標 – 日本独自のBI、ベーシック・ペンション (basicpension.jp)

『ポストコロナの「日本改造計画」』における竹中平蔵氏のベーシックインカム論

ここで大切なのは、「個人の生活スタイルはバラバラで、自由なものであるという前提」としている部分です。 これが、ユニバーサル・ベーシックインカムの基軸になってもいる考え方です。 ですから、竹中氏には、もう少し頑張って、ベーシックインカムを社会…

岩田規久男氏による財政破綻不安不要論:『「日本型格差社会」からの脱却』からー4

本稿の前提となる、岩田氏の主張の軸であるデフレ脱却のための財政金融政策は、次の通りです。1)金融政策 従来どおり、2%の物価安定目標達成のための「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を継続2)財政政策 基礎的財政収支の黒字化を急がず、そ…

岩田規久男氏による「給付付き税額控除制度」提案とベーシックインカム批判

『「日本型格差社会」からの脱却』 同書の中で、岩田氏は、日本の格差社会化の要因である長期化しているデフレからの脱却を目標に、経済政策において所得再分配の在り方の見直しと税制改革等の実行を提案しています。 その税制改革の一つに、負の所得税、給…

ベーシックアセット提案の宮本太郎氏のベーシックインカム論-1

8月8日、朝日新聞GLOBE+で、宮本太郎中央大学教授へのインタビュー記事【宮本太郎】行き詰まった社会保障、でもすべてベーシックインカム頼み、は危うい :朝日新聞GLOBE+ (asahi.com) が公開されました。 今年4月に同氏著 『貧困・介護・育児の政治 ベ…

コロナ禍及び現状から考える介護制度改革検討案:社会政策 長期ビジョン及び短中長期重点戦略課題として

お断りしておきたいと思いますが、介護サービス事業における効率化は、利用者へのサービスの合理化・効率化、極端を言えば省力化・サービスレベルの縮減を意味するものではありません。 利用者の送迎や、利用者宅への往復のための時間と諸コストを削減し、直…

ベーシックインカムを突き詰めて考えたことはない竹中平蔵氏

2020年10月12日にマネーポストWEBに掲載された「ベーシックインカム導入で50代会社員が大損か 月8万円収入減も」と題した記事にも取り上げられた、竹中平蔵氏の年金制度等全廃による月額7万円ベーシックインカム支給暴論。 それを元に、今年2021年1月14日に…

ベーシックインカム、ベーシック・ペンションと財政赤字、デジタル通貨、外国為替相場との関係:ベーシックインカム現実的実現法考察-7

専用デジタル通貨発行・給付によるベーシック・ペンションの合理性と必然性 既に社会生活上、社会経済上、現金への依存度の低下は加速しています。 クレジットカードはある意味過去の決済手段になりつつあり、各種電子マネーが主流になりつつありますが、あ…

ベーシックインカム導入によるインフレリスク対策-2:ベーシックインカム現実的実現法考察-6

現実的に、ベーシックインカム、あるいはベーシック・ペンションの厖大な通貨発行で懸念されるインフレに確実に効く方策はあるか。 正直、やってみないとわからない、起きるかもしれないし、大したインフレにならないかもしれない。 そもそも、特にベーシッ…

社会政策 2050年長期ビジョン及び短中長期重点戦略課題

2.保育政策・子育て支援政策、少子化対策・こども貧困対策 (基本方針) 長期化し、歯止めがかかっていない出生率低下・出生数減少、少子化対策の抜本的な見直しを、2050年人口1億人への人口減少社会を想定して行い、目標とする社会の実現を図る。 それと…

ベーシック・ペンション導入によるインフレリスク対策-1:ベーシックインカム現実的実現法考察-5

先に種々のインフレ発生要因を見ましたが、実際のインフレ及びハイパーインフレは、なにか一つだけの単独要因で発生・進行するものではなく、複数の要素・要因が関連関係し、複合的に伝搬・拡大・継続するものと考えます。 そこで、その要因とされるリスクの…

保育職・介護職等エッセンシャル・ワークの構造的低賃金対策に有効なベーシック・ペンション

これらの職種・職業は、いわゆる「社会的共通資本」ともいうべき公的サービスです。 それらは、決して、労働生産性を高めることとサービスの質を維持・向上させることを一体化すること、その結果としての利潤を高めることとを一貫して追求することになじまな…

保育職・介護職等エッセンシャル・ワークの構造的低賃金対策に有効なベーシック・ペンション

これらの職種・職業は、いわゆる「社会的共通資本」ともいうべき公的サービスです。 それらは、決して、労働生産性を高めることとサービスの質を維持・向上させることを一体化すること、その結果としての利潤を高めることとを一貫して追求することになじまな…

7万円現金給付ベーシックインカムの次にデジタル通貨ベーシック・ペンションを:ベーシックインカム現実的実現法考察-4

中国の中央銀行、中国人民銀行が2020年から本格的に実験を始めて発行しているデジタル通貨(CBDC)、デジタル人民元 。 現在の取引総額は345億元(約5900億円)で、利用者がスマホに取り込んだデジタル人民元の「財布」は2087万個あるという。 例えば、 北京…

非正規雇用者2千万人の不安・不安定を解消するベーシック・ペンション:BP法の意義・背景を法前文から読む-6

非正規雇用者に関して最も問題視されている賃金の状況です。 以下のグラフは、雇用形態別に年齢年代別の時間給ベースの違いを表したものです。 着目すべきなのが、<正社員・正職員以外の一般労働者>及び<正社員・正職員以外の短時間労働者>のそれと<正…